TARRYTOWNを終えて

ミュージカル TARRYTOWNが無事終演いたしました。
本記事にて、本公演の思い出を写真と共に綴らせていただきます。
本記事の写真はアートディレクターを務められた割田光彦さま撮影のお写真です。

ティザームービーの撮影は稽古が始まる前にされました。
キャストの皆様とは会えなかったのですが
沢山のクリエイティブチームの皆さまとお会いして
その和やかな雰囲気に癒されたことを思い出します。

今回のミュージカルは演出家の中原和樹さまとブロム役兼歌唱指導の山野靖博さまを中心とした自主公演的な側面が多いのですが、ホームページから動画まで本当に力を入れており、全てが芸術的でした。

before画像 after画像

割田さんのお写真はどれも、透明感がありつつもどこか官能的でとっても素敵なお写真を沢山撮っていただきました。

学び多き稽古の日々

TARRYTOWNの稽古は三ツ星アラカルト本番の翌日から始まりました。

暫く時差ぼけのような感じだった気がします。。
が、まあなんと楽曲の多いこと。
しかも全て難しい。

私は性質上、自分の身体に音楽や踊りが染み込むまで時間がかかります。
三ツ星アラカルトの初演の時もそうだったのですが、人よりもセリフも歌も覚えるのが遅いんです。

一方、TARRYTOWNの出演者さまは歌が上手いのは勿論、頭が良くて
物凄い速さで習得していかれるのです。
人と比較するのは良くない。けれど、やはり焦りました。
山野さんと音楽監督兼ピアニストの横内日菜子さんのお力をお借りして沢山の個人稽古にも付き合っていただきました。

トークショーの時にもお話ししたのですが、
リハーサルの時、うまくいかない自分に落ち込み
先輩である中井智彦さんにポロッとなかなか大変で。。とメッセージを送ったのですが
すぐに電話がかかってきて
『楽しめよ!!』
と、激励のお言葉をいただきました。
そこから、一気に視界も心も開けていった気がします。
いつだって、応援して、支えてくださる中井さんに感謝です。

寄り添ってくれる仲間たちと作品

稽古が終盤に差し掛かってきた時、突然悲しい知らせが舞い込みました。
私の祖父母が亡くなったのです。

あまりに唐突な出来事で、現実を受け止めきれない日々。
それでも、本番は近づいてくる。とにかく集中しなくちゃ。。

ちょうどその時、各班の通し稽古をする時期でした。
葬儀を後にして稽古に途中合流をさせて頂き
ランタンチームの通しを稽古場で拝見したのですが
私は、TARRYTOWNに救われました。
本作は、決して明るい話ではないけれども
人に寄り添う、懐の深さを持っている気がしています。
稽古場の皆様には限られた方々にしか事情を話していなかったのですが
みんなとても自然体でありのままの自分を受け止めてくださり、本当に救われました。

ついにきた!山梨での初日

時間が経つのは早く、二ヶ月もあった稽古はあっという間に過ぎていきました。
カンパニーのメンバーみんな愛おしいのですが
どれだけ落ち葉チームの二人に助けられたか。

落ち葉チームって、3人とも社交的に見えて実は恥ずかしがり屋の人たちだと思います笑
あと、なんかみんなして遠慮しがち。
言葉では言い表せないけど、なんかピタッと色々ハマった3人でもあった様な気がします。

私たち3人とも痛感したことなのですが
山梨のGP(本番同様の工程を踏む稽古)でガツンとハマりました。
決してお稽古で手を抜いていたわけではなく
舞台に上がった途端に花が開いていく感覚があった。

山梨の初日は本当にみんな緊張していて
もうどっかに飛んでいってしまうんじゃないかとも思ったのですが
その緊張感も逆に良かったのかも。
とてもリアルで繊細で大胆な公演だったと思います。

短い滞在期間でしたが山梨という土地も大好きになり
マシュくんという友達(劇場近くの喫茶店の看板犬)にも会えたので
また山梨を訪れる理由もできました。
またいきます!

きたぞ浅草九劇!

山梨での公演を経て沢山の気づきを得た私たちは、ついに東京公演の浅草九劇へ。
3人で110分を生き抜くということだけでも役者としてハードルが高いのですが
公演を2週間続けて上演すること。

長期公演の難しさは、いつでも新鮮に演じ続けることです。
どうしても、音楽やセリフが身体に染み込んでリアルな芝居がしづらくなってきます。

演出の中原さんは初日が開いても欠かすことなく劇場に来てくださり、
必ずノーツを私たちにくださりました。
これって実はすごいことで、大体、初日が開くとクリエイターチームは劇場に来ることはなくなります。
中原さんの演劇に対する熱意に感動しました。

私は中原さんに出会い、確実に役者として一皮も二皮も剥けることができたと思っています。
いつだってその場に初めて訪れ、生きている人間であること。
リアリズムとは何か。とても大きな収穫でした。

イカボットはどこに向かうのか

中原さんの演出スタイルとして、全体の決め事はあるけれど
役者の解釈に任せていただくところが多かった。

最後のシーンでイカボットは衝撃的な結末を迎えるわけですが
その描写の意味も、各チームの役者に委ねられています。

私なりの解釈ですが、イカボットは最後、透明な人間になってしまいます。
舞台セットの彼の椅子のような誰にも見えない姿になってしまう。
新しい生活を求めて大都会から逃げてきたのに
こんな結末を迎えるとは思ってなかった。

ずっと透明人間のままなのか、彼がこれからどうなるのかは私にもわからないですが
どこかで幸せを手に入れてほしい。
そして、もっといい恋愛してほしい。

すっごいクリエイターたち

どの現場でも,素敵な仲間たちに出会えますが
TARRYTOWNの仲間たちは特別に思い入れのあるメンバーになりました。

演出家 中原和樹さま

本作のオーディションから大好きになった方です。
中原さんを纏う優しい雰囲気が大好きです。
そして演劇に深い愛情と情熱を注ぎ,少しの妥協も許さない。
演劇に携わる先輩として、また1人追いかけたい背中を見つけました。

リアリズム演劇という手法を惜しげもなく、私たち俳優たちに教えてくださいました。
きっとこの技法は今後私が表現者として活動していく上で強靭なツールとなることになるでしょう。

TARRYTOWNを終えた今、改めて中原さんがオーディション直後に送っていただいたメールを読み返しましたが
目頭が熱くなりました。
TARRYTOWNのクリエーションはきっとあの時からすでに始まっていたのですね。

これからもずっと追いかけたい演出家であり先生です。

ランタンチーム ブロム役兼歌唱指導 山野靖博さま

様々な商業演劇でご活躍されている山野さん。
もちろん、お名前は存じ上げておりましたし山野さんの舞台も拝見した事がありました。

音楽をとことん研究されていて、まるで歩く辞書のような方です。
発声や音楽的なことは勿論,音楽から紐解いてイカボットの演劇的なアプローチも沢山してくださいました。

何度も公言してるのですが
TARRYTOWNって音楽が本当に難しいです。
私は歌も踊りもセリフも覚えるのが人よりも遅くて1人でウンウンうなってるのを何度も救ってくださいました。
稽古序盤に特別授業のような個人稽古をしてくださりその内容が有料級でした。
まだまだ知らないことが沢山あって自分の勉強不足に恥ずかしくもなりましたが
いつでも前向きにアプローチをしてくださる山野さんに沢山救われて沢山学ばせて頂きました。
音楽の道は果てしないけれども
音楽の豊かさ・奥深さを教えて頂き、もっと勉強したくなりました!

山梨公演の終演後、『君は本物のアーチストだね』と言っていただき本当に嬉しかったです。

音楽監督兼ピアニスト 横内日菜子さま

私よりもだいぶお若いのに、とってもしっかりしているお方。
音楽の理論的な側面からも沢山アプローチして頂きました。

なんと音楽監督をはじめて務められたようです。
こんなに難しい作品を初めてのキャリアにするとは、、もう敵なしですね笑

前述した山野さんの特別授業を2人で受けさせて頂きました。
難しかったけど楽しかったなあ。

稽古中盤くらいから、日菜子ちゃんもピアノを演奏することになったのですが
あまりにも上手すぎて泣けました。
ドラマチックであり、歌うように弾く彼女のピアノが大好きです。

大好きな落ち葉たち

この2人がパートナーでよかった。
神メンバー。

落ち葉チーム ブロム役 tekkanさま


tekkanさんの第一印象。
イケメン!
私がミュージカルに興味を持ち出した高校生のとき、tekkanさんは様々な舞台で活躍しており
そんなレジェンドの様な方と一緒の芝居を作らせていただくことに感動しました。
後に、tekkanさんと同じチームになると知った時、嬉しくて一人で興奮してましたw

大先輩なのにいつも低姿勢で穏やか。
引っ張ってくださる時は、勿論とっても頼もしくて
舞台上ではtekkanさんがいれば大丈夫、という安心感が半端なかった。

歌は、その人の人生が出るものだと思っているのですが
tekkanさんの歌声は優しさの中に強さがあり
側でお歌を聞かせていただいたのは、何よりの勉強となりました。

落ち葉チーム カトリーナ役 武田莉奈さま

莉奈ちゃんの第一印象。
美女!
初めてお会いした時に眩しさに圧倒されました。
本作は沢山のグループディスカッションがあったのですが、
芝居に対してとっても真摯で優しい心の持ち主であることがわかりました。

初演から続投されているのに、フレッシュさをずっと保ち続けている。
これってすごいことなんです。
それほどに、彼女もまたTARRYTOWNが大好きだったんだと思います。

どんどん研究・成長していく彼女を見て
自分も鼓舞されました。

カトリーナのことはちょっと苦手だけど、彼女のことは大好きです。

気遣いさん3人が集結した落ち葉チームだけど
少しづつ歩み寄る事ができ、かけがえの無いパートナーになりました。
落ち葉チームの一員になれたことを誇りに思います。

チームの垣根を超えた絆

皆さま本当に魅力的で、表現者として・アーチストとして尊敬できる方ばかり。
チームは違くても、みんな本当に仲が良くて
お互いを高めあえる仲間たちでした。

演奏家の方々も、ミュージシャンとしてではなく
まるで歌い手の様に存在してくださり
いつでも舞台上では3人ではなく5人で芝居をしていました。

また皆さまと一緒に舞台を作れるように頑張っていきたいし
今度は別チームではなく、舞台上で共演したいです!

また、この記事では紹介し切れませんが
沢山のスタッフさん・制作さんたちが舞台を作ってくださいました。
誰一人として欠かすことが出来ない仲間でありファミリーです。
感謝しかありません。

沢山の応援をありがとう

本当に沢山の方々に本作を観ていただきました。
演劇のチケットは決して安いものでは無いのに、何度も観て下さったこと
また、落ち葉チームだけでなく他2チームも観て下さったこと
会場には来れなかったけど、SNSなどを追いかけて応援して下さったこと
本当に嬉しいです。
ありがとうございました。
いただいたお手紙は全て拝読し、全て私の宝物です。
猫ちゃんグッズも美味しいお菓子も、本当にありがとう!

大好きなことを仕事にするって、大変な事だし
どこかに罪悪感があるのだけども
お客様からいただけるお言葉は全て温かくて
このまま続けていいんだ、、と思わせてくださいました。

SNSの投稿も沢山拝見しましたよ!
私と同じくみなさん #タリ沼 で #タリロス ですね。
ズブズブ…..

樋口祥久の代表作になりました

始まりがあれば終わりがある。
こんなに濃密な二ヶ月はそうないでしょう。
私はしっかりTARRYTOWNロスしています。

リハーサルでは不器用な自分に腹を立てて悶々とした日々が続きましたが
沢山の人に支えられて、イカボットのことが大好きになりました。

舞台に立つことをして20年ほどですが
続けていけば、舞台の神様はご褒美をくださるんだなあ。
これからも沢山の素敵な仲間に、作品に出会えるように
俳優活動を続けていきたいです。

本当にありがとうございました。

樋口祥久

1 COMMENT

薫spearman大坪

舞台って本当に素敵です!!
観劇叶わなかった事本当に悔しいですが、ブロク拝読して嬉しかったです。
生きている限り忘れない、キャストさんも観客も。そんな舞台だったんですね。
円盤あるない関係ない、絆の舞台がぐっぴーさんにまた授かった事を、心から喜んでおります。
40年近く前に一緒に観たミュージカルの話を、母と私はまだしています。叶わなくても、「また観たいね!!」と、笑い合える作品。尊いですね😂
改めまして、千穐楽おめでとうございました!!!👏✨🍂💐

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